From:今田 覚
新宿の喫茶店ルノアールより。
それはまるで、刑務所で尋問にあっているようだった。
というのも、隣に座っている男女が、犯罪者と警官のような会話をしているからだ。
男性は20歳くらい、女性は30歳くらいだろうか。
敬語を使っているので、カップルではないのは分かる。
一体、どんなやり取りか?
こんな感じ。
女「趣味は?」男「テニス」
女「彼女は?」男「いない」
女「欲しいと思う?」男「別に」
女「なんで?」男「面倒臭い」
私は隣でサンドウィッチを食べていた。
話しはまだ続いた。
女「バイトしたことある?」男「ある」
女「どんな?」男「セブン」
女「なんで?」男「親に言われた」
女「将来の夢は?」男「ない」
もしこのような単調の質問のやり取りがあったとして、30分も続いたら、あなたは耐えられるだろうか?
私は絶対に耐えられない。
しかし、どんな罰ゲームだったかのかは分からないが、彼らは30分の拷問をやってのけた。
二人の目的は何か?
もしこれが、女性側の営業目的だとしたら、あまりにも「拒否」され続けていたので、絶対に不利な立場にいただろうと思う。なので、単なる出会い系で知り合った人たちなのかな〜と思っていた。
しかし、私の勘は完全に外れた。
女性の目的は「勧誘」だった
女性は突然様子がおかしくなり、資料を取り出して、彼を説得しようと必死になった。
「私はこれで、こんなに人生が変わったから、君にもそれを教えたいと思ったんだよね。きっと君にもできるよ。そして・・・」彼女は続けた。
- 「好きな時に海外に行って」
- 「好きな時に仕事をして」
- 「好きな時に遊ぶことだってできるんだよ!」
「一緒に頑張っていかない?」
(怪しすぎるわ!!!)
必死に説明し続ける彼女に対して、彼はこう即答した。
「いや、いらないです」
一体、何が起こったのか?
彼女はやっとの思いで質問を終えて、説得するための準備をしていたが、たった一言で「撃沈の空気」に変わった。
ショックを隠しきれない彼女の声が震える。後押しとして、不器用な説明をしている。。。
これは、営業に失敗した物語。
なんと、それは私の隣で起こったのだ。
とは言っても、客観的に見たら「下手だなー!」とか思ってしまう。
営業は「聴く」ことが大切だなんて言われるが、彼女は愚直に実践していたように思う。
にも関わらず、彼女はフラれてしまった。
なぜか?
私たちは、相手の話を深く聞いているフリをして、全く聞いていない傾向がよくある。もっと言うと、寄り添って聞いていない。
まるで魂が入っていない。
「聞き上手は話し上手」なんてのは誰でも知っているが、実際にそれを実践するのは難しい。
この話の教訓
心がこもっていなければ、すぐに見抜かれる。
私たちは、つい相手のことを考えているようで、商品やサービスのことしか考えていない傾向が強い。それがたとえ、最初は「相手のため」と思っていたとしても。途中から焦って、気付かないうちに自分のことしか考えなくなってしまう。
自分の話しで恐縮だが、私はやっと、相手のことを考えて動けるようになった。
最初はエゴの塊だった。もちろん、今もそんな時がある。
でも、心から感謝してもらい、心から仕事を任せたいと思ってもらえるようになったのは、ちょっと前からである。
私たちは、自分自身とのエゴと戦って、人間力を磨いていかなければならないと思う。
一番大切なのは、目の前にいる人を助けることだろうか?
商品やサービスを売ることだろうか?
売り上げを上げることだろうか?
それとも、自分自身だろうか?
P.S.
隣に座っていた男性が帰ったと思ったら、今度は別の男がやってきた…
第二弾の営業の始まりだ。頑張れ。
P.S.S
こんな記事も読まれています↓